結婚式を簡単に延期・キャンセルできない理由

結婚式

私達夫婦は2020年4月5日に予定されていた結婚式を新型コロナウイルスの感染拡大を懸念して延期しました。命の安全が一番であることはもちろんなのですが、結婚式の延期は「コロナだからしょうがないね」と簡単にあきらめられたわけではありません。しかし、なかなかその理由がわからない人も世の中にはいるようなので、当事者の目線で簡単には結婚式を延期・中止できない理由を解説したいと思います。

当然、命の安全が一番

結婚式にかぎらずイベント系の延期や中止で引き合いにだされるのが人命です。「コロナが危ないのに結婚式だなんて非常識」「コロナが怖くて結婚式に行きたくないから延期してほしい」というような当事者以外の声がネットに上がっていますが、当然命が一番大切なんてことは新郎新婦もわかっています。なんなら、結婚式こそ大切な家族や、たくさんの友人知人の中でも特に大切な人たちを呼ぶ場なのでより真剣に考えています。

しかし、そんな大切な人たちの命のことが頭にありつつも、そう簡単には結婚式の延期や中止を決断できない理由があります。

理由1:莫大なキャンセル料

結婚式を挙げたことがない人でも、以下の3つは知っているかと思います。

  1. 結婚式に数百万円という大金がかかっていること
  2. 旅行や飲み会などと同様にキャンセル料は当日が近くなればなるほど高くなること
  3. 結婚式の費用の一部はご祝儀でまかなうことが多いこと

この3つを軸に費用面での結婚式の延期・中止のしにくさを解説します。

結婚式には大金がかかる

結婚式の費用:平均354万9000円

こちらは挙式+披露宴の平均総額。中でも大きなシェアを占めるのは披露宴の飲食代で、招待する人数に比例して金額は変わります。他に挙式料や衣裳代、演出、会場装飾、ギフト代などが含まれています。(※結婚指輪は平均額に含みません)

https://zexy.net/mar/manual/kiso_souba/

ゼクシィによると、結婚式の費用の平均は350万円ほど。これは全国の平均なので、首都圏はもっと高額になります。日本国民の平均年収が400万円程度ということを考えると結婚式だけで年収と同じくらいの金額を使うということになりますね。

日程が近くなればなるほどキャンセル料が高くなる

大人であれば、一度くらいは飲み会をしたり旅行に行ったりしたことがあるかと思います。その際にキャンセル期限やキャンセル料を確認するかと思います。結婚式ほど小刻みで無いでしょうが、当日にキャンセルすると何もできないのに全額支払うことになるケースが多いので、天気や体調には気をつけなければな。と思いますよね。

結婚式も同様に日程が近くなればなるほどキャンセル料が高くなります。厳密には、延期料金と中止料金とは異なるため参考までに私達が挙げる予定のアニヴェルセルの延期・中止の料金を載せておきます。※コロナ影響下では随時ルール変更をしているので多少異なっている可能性があります

キャンセル料(中止の料金)

結婚式は飲み会や旅行と異なり、当日までに打ち合わせや前撮りなどのサービスを受けていくことになるため、キャンセル料は高額になり、発生する日程も小刻みになります。

解約通告日内訳
契約成立から181日前までアイテム別取消料
180日前から121日前まで申込金の100%、アイテム別取消料、基本料金の20%
120日前から91日前まで申込金の100%、アイテム別取消料、基本料金の40%
90日前から51日前まで申込金の100%、アイテム別取消料、基本料金の60%
50日前から1日前まで申込金の100%、アイテム別取消料、基本料金の100%
開催日当日最終見積書に記載の総合計額の100%

ちなみに、申込金は10万円。基本料金は、チャペルの利用料など挙式に必要な最小限の費用で約100万円です。アイテムというのは衣装や料理、引き出物など人によってランクや数が変わってくるものの費用です。私達夫婦は合計が約500万円で世帯年収の40%ほどの予定です。

延期料金

延期料金はキャンセル料のキャンセル料の20%の支払いとなります。(181日前までは一律5万円)ただし、14日前から当日までは延期できずにキャンセルとなってしまいます。

人生で一度くらいは、飲み会当日に体調を崩してしまったり、仕事が終わらなくて行けなかったりで、参加できなかった飲み会のお金をしぶしぶ支払ったり、旅行と台風が重なって泣く泣く直前キャンセルして行けない旅行のキャンセル料を払ったことがあるかと思います。

数千円から数万円(旅行によっては数十万円にもなるかもしれませんが)であれば、悔しいけど支払うことができるかと思いますが、やらない結婚式のために数百万円の支払いが発生するとしたらどうでしょう?「仕方ないねーキャンセルしよう!」と気軽に言える人の方が少ないのではないでしょうか・・・?

また、ご祝儀を差し引いた自己負担分を用意しなければならないお金として見込んでいることが多いので、全額のキャンセル料を払うことになるとは思っていないのが普通です。

結婚式の費用の一部はご祝儀でまかなう

結婚式の費用が数百万におよぶという話をしましたが、一般的には全額を新郎新婦が支払うわけではありません。例えば、100人のゲストの結婚式を500万円で挙げようとし場合、自己負担額はこのように計算出来ます。

500万円-(3万円×100人)=200万円

もちろん、学生のゲストがいてご祝儀が1万円。親族は5万円のご祝儀・・・など若干増減しますが、500万円の結婚式を挙げるとしても、新郎新婦のお財布から全額を出すわけではなく、ご祝儀との差額分を新郎新婦は支払います。

全額を支払う人生設計はしていない

500万円を支払えないわけではないけれど、結婚式が無事に挙げられていれば200万円で済んでいたとすると、新郎新婦の頭の中では200万円だけを結婚式に充てる人生設計をしています。300万円の差額の部分は、新婚旅行や子育てに充てようとためたお金です。まさか、キャンセルして何も出来ない結婚式のために、結婚式のために貯めたお金やその先の生活で使う費用まで払うことになるとは思っていません。しかも、結婚式を挙げるのは若い夫婦が多いのでたとえ年収が高くてもその時点で大きな貯金がないということも考えられます。

飲み会の幹事をして5,000円のコースを100人で予約したけど当日に全員にドタキャンされて急に50万円を支払うことになったらどう思うでしょうか?後から回収するにしても、想定外の支出に戸惑うでしょうし、貯金がない若手の社員であれば明日の生活にも困ってしまったり借金をすることにもなりかねないかと思います。

よっぽど大金持ちでない限りは、やらない結婚式のためにご祝儀分も含めた全額分のキャンセル料を気軽に支払えない夫婦が多いかと思います。仮にお金持ちだったとしても、何もしないのに数百万円を支払うことは虚しいはずです。結婚式の延期や中止が簡単に出来ない理由の一つとしてキャンセル料があることはお分かりいただけたでしょうか。

理由2:家庭の事情

家族の病気や寿命

近年、晩婚化が進んでおり、厚生労働省のデータによれば、平均初婚年齢は夫 31.1 歳、妻 29.4 歳となっております。結婚する夫婦の年齢が上がっているということはその親や祖父母の年齢も上がってきます。

年齢が上がれば上がるほど病気もしやすくなりますし、寿命も近づいてきます。結婚式を挙げる新郎新婦にも病気の家族がいたり、高齢の祖父母がいる場合があります。今結婚式を挙げれば参列して貰えるけど、延期した日程まで生きているかわからない・・・。延期して、その間に死んでしまったら後悔してもしきれない・・・。と延期に踏み切れないものです。

本人の病気や年齢

『余命1ヶ月の花嫁』という映画がありますが、そこまでではないにしても病気の進行を考えると今結婚式を挙げたいという理由がある夫婦もいます。単純に子供が欲しいから年齢が気になるというケースも多いですが、子宮の病気を患っていて進行すると子供が望めなくなってしまうのでなるべく早く結婚式を終えて妊活をしたい。という夫婦もいます。

確かに健康に生きていれば結婚式はいつでも挙げられるものではありますが、そもそも若いからといって必ずしも健康体ではないので、そのような事情があると結婚式の延期は決断しにくくなります。

転勤・転職/退職

転勤をするとなると、今住んでいる地を離れなければなりません。他のゲストには影響ないかもしれませんが、当人たちの準備や移動が大変すぎます。場合によっては海外転勤のケースもあります。そうなると国内で結婚式を予定していた場合は転勤前に結婚式を挙げたいと考えたくなります。

また、予定していた結婚式の日の後に転職や退職を予定していた場合はゲストの変更が大変になります。両家の主賓を上司とする場合も多いので、転職や退職をする場合は呼びにくくなりますし、主賓の方だけでなく同じテーブルに座る予定の同僚も呼びにくくなります。転職後の日程に延期した場合、転職後の上司や同僚の扱いをどうするのか・・・転職前に人は遠慮してもらうのか・・・?と話がとても複雑になってしまいます。

理由3:人生設計が狂ってしまう

参加するゲストにとって結婚式はたった1日のイベントです。それが延期になったところでゲストにとっては運動会が雨で延期したくらいの影響しかないので大したことないんだから大騒ぎする理由がわからないという人もいるかもしれません。

しかし、新郎新婦にとっての結婚式はたった1日の出来事ではなく、プロポーズから始まり、その後の人生に大きく影響する「結婚という一連のイベントの中の一つ」になります。一番わかりやすい例として、結婚式が遅れれれば子供をもつ時期も遅くなるということがあります。近年は晩婚の方が多くなっているので、1年の遅れというのはとても大きな影響となります。

他にも、転勤や転職、退職、家を建てるなどの人生設計も全部後ろ倒しになってしまいます。大人になればなるほどライフイベントというのは自力でコントロールできなくなって来るので、それらを調整するのにまた大きな労力を必要とすることになります。

まとめ

確かに、結婚式は健康に生きていればいつでも挙げられるというのは大きく間違ってはいないものの、たった1日とはいえ、その結婚式に大きな労力やお金がかかっており、その後の人生への影響も考えると延期や中止を決断するのは簡単ではありません。

コロナウイルスに感染して辛い思いをしたり、死んだりしたくないという気持ちは人類共通であるものの、ただただ恐れて新郎新婦を非難するのではなく、当事者が置かれている状況に対しても気を配ってコミュニケーションすることが大切です。

結婚式に今呼ばれていないのであれば、他人の結婚式について心配しなくても結婚式でコロナに感染する機会はありませんし、もし結婚式に呼ばれていて、コロナが怖いから欠席したいというのであれば、新郎新婦の置かれている状況をしっかり理解した上で正直に「コロナが怖い」と伝えて欠席すれば新郎新婦もわかってくれるはずです。ただし、結婚式を欠席しておきながら旅行やイベントに行った場合は信頼を失い、その新郎新婦とは縁を切ることになりますのでその後の行動には気を付ける必要があります。